執事を伴って商店街を、“しゃなりしゃなり”と歩く貴婦人の持ち込んだ依頼は「私を広告して頂きたい」と風変わりな案件でした。街の活性化にも繋がると、杉山以下、メンバーの意気は上がりますが…。
1枚の写真に一目惚れした杉山。そして、本人が降臨!
時刻は夜の9時30分。街中は賑わう事もなく、まっくらでシーンと静まり返っていました。住まいとして借りている船具屋の風呂に浸かりながらユニバーサル広告社のディレクター・杉山利史(沢村一樹)は「これでいいのかなぁ」と、ノンビリし過ぎた日常に不満気な様子です。
「まっ、いいか」と、風呂からあがり何気なく船具屋の棚を眺めていると、パネルになった昔の写真を見つけました。
その中の1枚に、古き良き映画女優を思わせるような気品ある女性の写真を見つけます。どうやら杉山は、その写真の女性に一目惚れしてしまったようです。
翌日になっても杉山は、その写真の女性の事をデザイナーの村崎六郎(要 潤)と事務の猪熊エリカ(片瀬那奈)にニヤけた顔でベラベラと話しています。
その話しをしている最中に、喫茶店「ジュルビアン」の娘・藤沢さくら(和久井映見)が事務所に客を案内して来ました。そのお方がナント、杉山が写真で見て一目惚れした永山サキ(大空眞弓)その人だったのです。シャッター商店街と化した通りを、執事・只野(佐野 稔)を伴って歩いていた所を、さくらが見つけて連れて来たそうです。
自分自身を広告するためにやって来た「坂の上の姫」
当然ながらサキは、広告の依頼にやって来たのでした。何でも、自分の屋敷の外へ出たのは20年ぶりだそうです。彼女は「坂の上の姫・サキ様」と呼ばれ、古くから街に住んでいる人なら知らない人はいないという程の“名士”だったのです。
その彼女の依頼は「私を広告して頂きたい」というモノでした。もう少し詳しく話しを聞いてみると、「自分が元気で美しく、輝いている事を伝えたい」人が世界にただ一人いて、その人のために広告を打って知らせたいんだそうです。「やり方はお任せします」と言葉を残して、サキ様は帰って行きました。
さっそくジュルビアンのマスター・宏(でんでん)にリサーチをしてみると、サキ様の人となりが見えて来ました。マスターによれば、永山家はこの辺りの代々の領主でした。かといって庶民から搾取する事なく、村の繁栄にも熱心だったのだそうです。
そこに一人娘として育った娘・サキ様は宏いわく「世界一の美女」。ボンド・ガールを「相手役が毛深いから嫌(S.コネリーかw)」と断ったり、加山雄三の映画を「陽に焼ける」と断ったりと、逸話に事欠かないのだそうです。名家の跡取りや富豪からの求婚を全て断り、いまだ独身というのもミステリアスです。もしかして、広告したい相手というのは…。
街の人々の見守る中、撮影は快調に
「この広告が当たれば、小説化やドラマ化もされて街の宣伝にもなる!」との猪熊の意見に、喫茶店にいた一同も大いに沸き立ったのでした。難航したコピーも杉山が
「わたしは、わたしを生きていく」と、作り上げてクライアントのサキ様のOKももらいました。
メイン・ビジュアルはもちろん、サキ様で港、神社、ジュルビアン内と撮影は全て順調でした。移動中や撮影最中は、まるで大名行列のように街の皆が笑顔でサキ様の後を歩いてついて行く姿が印象的でしたね。
そして、漁港をバックに和服で立つショットを使った見本が仕上がります。デキが悪いわけはありません。サキ様も充分に満足してくれた様子でた。しかし、その口から出た言葉は「ありがとう。でも、ごめんなさい。もう必要なくなってしまったの…」でした。
サキ様が伝えたかった相手が昨日、亡くなってしまったと言うのです。「短い間だったけど、私が一番愛した人」で、二人の関係が知れると“歴史が変わってしまう”程の人とも言っていました。
サキ様は「そっとしておいてください…ごきげんよう」と、執事を従えて帰って行ってしまいました。
杉山をはじめ、スタッフには「達成感」という大きな置き土産を残してくれたようです。