迷子になった警察補助犬を保護した帰り、公園を歩いていると右京は見慣れない外来種かと思われる“アリのような生物”を発見。冠城が、管轄の環境省に連絡して現場に来てもらうと、日本で初めて発見された「ジゴクバチ」と判明します。この外来種が、事件に大きく絡んでくるとは…
国際問題を孕んだ事案に、関係しているのか!?
ジゴクバチを発見した行きがかり上、特命係の杉下右京(水谷 豊)と冠城 亘(反町隆史)は環境省の担当官らに同行して、ジゴクアリの発見・駆除を手伝う事になりました。担当官が言うには、主に中央アジアに棲息しており、ジゴクバチに刺されると即効性ではないものの、毒が回り“地獄の苦しみを味わって”死に至るそうです。
そのジゴクバチを、右京は民家のすぐ前で発見しました。右京は、冠城とともに注意を促しにその家を訪れると留守のようで玄関は閉まっていました。庭先に廻ってみるとガラス戸が空いていましたが、そこからは死臭のようなモノが……。室内に入って確認すると、家主の小関豊子さんの死体が転がり、そこには無数のジゴクバチに刺された跡があったのです。
即効性のない毒にも関わらずに、刺されても処置してないという事は、「拷問」の可能性があると考えた右京は捜査1課の伊丹(河原和久)と芹沢(山中崇史)を呼んで、事の事情を説明しました。
自室の標本や自分の載った専門誌から、小関は有名な“蝶”の収集家という事が分かりました。最近では中央アジアのトリジスタンから帰国しています。その時に同じキャンプにいたのは、小関の部屋にあった集合写真から大手商社・九斗美商事社長の夏焼と部下の日比、NGOボランティアの男女二名、ヨーロッパ人三名、現地の少年達という事が分かりました。撮ったのは日本人写真家の藤本(岩井秀人)で、当時の様子等を聞いた所、疑わしい点はなかったとの事でした。
今度は、その写真の中にいた日比が同じくジゴクバチによって殺されました。「連続殺人か?」という線が濃厚になってきましたが、捜査は捜一から公安部外事3課に移されました。というより、外事3課は、中央アジアからテロリストのアル・アルマズルが日本へ入国したという情報を掴んでいて、この2件の殺人も関連性があると見ていたのでした。
テロの恐怖と法務省からの圧力
公安部外事3課からは、特命係にも「手を出さないように」と釘が刺されました。監察官の大河内(神保悟志)からも「これは懲罰云々ではなく、あなた方の身の安全のために忠告しておきます。あとの事は外事3課長の嗣永に任せておけばいい」と告げました。大河内は嗣永をよく知っていて「組織より正義を優先させる人物」と言っていました。
もともと監察官だったらしいのですが、当時の閑職だった外事3課中央アジア担当に飛ばされて、地道に今の位置を掴んだらしいです。
ひとまずテロは、その外事3課に任せるとして右京らは事件の背景を洗い始めました。すると、九斗美商事は欧州企業のアースプライス社と組んで武器の売買をしている事が分かります。そればかりか、アースプライス社を使ってマネーロンダリングをしている疑惑も上がっていたのです。
東京地検特捜部が、その問題にメスを入れようとした際には「待った」がかかったと、冠城の法務省時代からの友人の黒崎検事が教えてくれました。九斗美商事は“国策”として動いている面もあるので、それが明るみに出ると厄介な事になるのは必至だからです。
同様に今回も法務省事務次官・日下部(榎木孝明)から「これ以上、首を突っ込むな」と恫喝され、黒崎は高松へ転勤させられてしまいました。
内乱に乗じた武器売買でのトラブルか?
トリジスタンでの事情は掴めてないものの、テロリストのアルマズルの標的は九斗美商事・夏焼社長である事は間違いありません。そこで右京と冠城は夏焼が寄る予定の料亭で張り込む事にします。すると、そこに外事3課の捜査員が現れて特命の二人は嗣永の前に連れて行かれました。嗣永はトリジスタンで記念写真を撮ったカメラマン・藤本と同一人物だと分かりました。彼は、見事に潜入捜査をしていたのでした。
その嗣永から、九斗美とアースプライスは共同で武器をトリジスタンに売り込んだと聞きました。南北に分かれて紛争をしている、南にミサイルレーダーを売り込み、北には地対空ミサイルを売っていたのです。
そうなると、北が購入したミサイルは役には立ちません。その北に九斗美・アースプライスを橋渡ししたのが小関だったのです。
これで、今回の一連の殺人が“報復”である事が判明、実行はアルマズルを首領とする「正義の夜明け団」というテロ組織の仕業と分かりました。嗣永は、この事情を特命に話したうえで「どうせ、じっとしてはいないでしょう?」と、夏焼の警護班に加わって共に捜査を進めるよう促しました。
「正義の夜明け団」は、報復すると決めたら地の果てまでも追いかけて復讐を果たす事を教義としていました。嗣永のデータベースでもこれを「正義の掟」と意訳して、資料としていました。
ところが、右京らの警護も虚しく夏焼は自宅を密かに出た所を襲われて、またしてもジゴクバチで殺されてしまいました。しかし、この手口について右京は疑問を持ったのでした。
日本での報復は、アルマズルの犯行ではなかった!
夏焼が殺された事で、特命係は警護からも“お役御免”となりました。そこに、英国・スコットランドヤードで研修中の陣川警部補から「アースプライスの社員三人がヨーロッパで蜂の巣状態に撃たれて殺された」と連絡が入りました。
普段から二丁拳銃を常とするアルマズルの犯行であると、容易に想像ができます。という事は、ジゴクバチにこだわった報復を取ったのは誰か?この問題も右京には、容易に推察できたのでした。
嗣永が意訳した「正義の掟」は、元となったのは「ドグマ」という教義です。それを正確に訳すと「宗教・宗派における決定、命令」です。
嗣永は自分なりの意訳に忠実に、報復する事を決定して古くからあるジゴクバチで殺人を重ねたのでした。
ちなみに、夏焼を自分の指示で自宅から脱出させ、安心させた所を殺したのも嗣永です。
全ての犯行がバレて、詰問した右京に二丁拳銃を構える嗣永に「自分の正義に従ってください」と右京は力強く言いました。嗣永は「ミサイルで死ぬ寸前に子供が言った、“医者になりたい”という言葉が忘れられなかった」と誰にともなく告白して、2丁のオートマチック・ピストルを置いたのでした。
それにしても、今話は前後編かスペシャルにしてもいいくらいの濃さのストーリーでしたね。それを46分の尺に収めた「脚本・真野勝成の力量」を、充分に堪能した回でした。
(注:ジゴクバチは架空の生物です)