クリスマスイベントで賑わう会場で、発砲事件が発生しました。凶器には「サクラ」(制服警察官が使用する拳銃)が使われ犯人は逃走、足を撃たれた被害者も自力で消えた模様です。歳末パトロールで現場近辺に居合わせた警視庁特命係の二人は、これ以上の被害者を出さぬよう捜査に乗り出しますが、不審な点が幾つも挙がってきました。
目次
自殺した交番勤務の「サクラ」で犯行が!
クリスマスイベント会場の警備を要請された特命係の杉下右京(水谷 豊)と冠城 亘(反町隆史)は、昼食を終えて会場へ戻る途中に1発の銃声を聞きました。
騒然とする会場の出入り口、逃げ惑う客に逆行して会場へ戻った二人は、被害者・加害者の両方が姿を消している事に気づきました。すぐ近くに出店していた店員に話を聞いた所、犯人は走って建物の外へ逃げて行き、足を撃たれた被害者は救急車の到着を待たずに自力で歩いて立ち去った様子です(後に地下駐車場から、クルマが猛ダッシュで出て行く所を目撃される)。
犯人の年格好の特徴は、「着ていたパーカーのフードを目深に被っていて顔は分からない」との事でした。
この時点では事件の因果・背後関係は判明しておらず、全くの手探り状態でした。ところが、鑑識課・益子(田中隆三)の「戻って詳しく見てみないと断言できないが、これは“サクラ”から発射された弾丸だな」と、という言葉で事態は一変します。
その銃は派出所内で自殺した風間巡査部長のモノと判明。犯人は派出所での自殺を知り、拳銃を持ち去って行き、犯行に及んだと捜査本部は見ていました。この時点では、まだPCをハッキングして自殺を知り、銃を持ち去ったとは考えられていませんでした。
ただ、どちらにせよ警察官の所持する拳銃で、殺傷事件が起こったとなると事は重大です。
その事実を伏せたまま、広報課長の社 美彌子(仲間由紀恵)は、銃撃事件についての記者会見を開いていました。ところが、その会見途中にJアラートが鳴り響き“銃を奪い去る”場面の動画が流れたので「隠蔽ではないのか!」と、記者たちは騒ぎ出します。
その動画には「QTEC689」とH.Nが添えられていました。
暗躍する“被害者・安田”、冠城と社に「脅し」をかける!
事件後、行方知らずとなっていた被害者・安田(梶原 善)は、冠城に接触をはかって来ました。冠城は素早く安田の身体検査をします。「警察手帳は持ってないよ。公安じゃないからな」。
明言はしなかったものの、公安ではないとすれば「内閣情報調査室」(以下、“内調”と表記)の所属であると暗に言っているようなものでした。内調としては、事件について警視庁はどこまで真相にたどり着いているのかが知りたかったのです。
冠城の公私すべてを調べ上げた上で「自分の未来も大事なモノも、失いたくはないだろう」と脅して、警視庁の情報を漏らすように仕向けてきたのです。冠城は、従うしかありませんでした。
そうして冠城は、安田と密談を交わしたあとに庁内へ戻りました。すると警視庁内へ入ろうか、どうかと迷っている女性がいて、右京とともに事情を聞いてみます。
すると、その女性・麗華は隣に住む椎名智弘(小原唯和)が半年前から行方不明になっていて、その直前に正体不明の男と話し込んでいる姿を見たというのです。そして、ふさぎ込んでいる智弘に事情を聞くと、「何で、あんな恐ろしいモノを見てしまったんだ!」と、泣きそうな声で言ったんだそうです。そして、「この事は婆ちゃんには、言わないで…」とも。
そんなヤリトリがあったあとの6月24日に、智弘はいなくなったのでした。その智弘の部屋で右京は、友人と思われる三人で一緒に撮った写真を見つけます。
そのグループ「チームtomo」は、2017年の「バグハンターコンテスト」で優勝した時のショットだと分かりました。その大会は、主にハッカーが参加して腕を競い合うモノでした。
智弘とチームで出場した上条喬樹(健太郎)と冨樫航大(山下真人)も、6月24日に姿を消しているのでした。
右京は、派出所での風間巡査部長の自殺も含めて、一連の犯行には繋がりがあるのではないかと考え始めました。
また、安田の上司である内閣情報調査室審議官・有馬武人(鶴見辰吾)は、警視庁副総監・衣笠(大杉 蓮)に連絡を取りました。衣笠は虚偽の発表(衣笠は気づいていなかった)をするように社に指示を出しました。社も冠城同様に自分の娘の出自について脅されていたのでした。
脅迫で人を操る手口が“見えた”右京
社が記者発表させられる予定だった原稿を要約すると、
「犯人は上条喬樹(実名報道)、半年前の警視庁サーバーに不正侵入」
「虚言癖があり、ダークウェブにも出入りしていた」
「奪った銃で、テロ行為に」
といった内容でした。
社は脅迫には屈しませんでしたが、自分と国際スパイとの関係をほのめかす記事や、娘・マリアに関する憶測記事が新聞に流されました。内調による報復措置としての、マスコミへのリークと見て間違いないでしょう。それでも社は、自分の信念を曲げなかったのでした。
その上条に対して衣笠は、「上条を素早く逮捕しろ!抵抗したら、発砲もやむなし」とハッパをかけます。これも、有馬の入れ知恵でした。
この捜査方針に右京は「上条は、ほか二人の高校生とともに何らかの事件に巻き込まれている可能性があります」と、進言しますが逆に「そんな大事な情報を報告しなかったのか。杉下右京、冠城 亘の二名は停職処分とする!」。
ここで衣笠は内調の有馬に“貸し”を作ると同時に、警視庁内での権力争いで「目の上のタンコブ」の甲斐峯秋(特命係を指揮下に置く立場にある)長官官房付を追い込む手を打ったのでした。
停職処分が正式に発表されると、警察手帳が使えなくなるので右京と冠城は、急いで大河内監察官(神保悟志)に自殺した風間巡査部長が、なぜ刑事から交番勤務へ異動になったのかを聞き出します。
大河内によると「事故死した内閣副官房長官の山脇氏についての不審死を、最後まで唱えていたから」と言う事でした。異動後も独自に調査をしていたらしいと、合わせて教えてくれました。
その事件に関しては、「死亡の翌朝に、山脇さんのモノと思われるカバンから何かを抜き取っていた男がいた」と証言があったのですが、それが途中で“見間違え”で取り消されたのでした。
多分、抜き取ったというのは山脇の遺書で、死の真相は「自殺」という事になります。内調に弱みを握られたか政府要人の情報入手を強要されての“覚悟の自殺”だったのではないかというのが、右京の見解です。
その証言者・田中さんに会うと「息子の就職内定先まで調べていて、何か聞いて回られたら取り消されてしまう」からと、半ば脅されて証言を取り下げたのでした。
その聞き込みに来たのが、刑事になりすました安田で、事件解決後(溺死として処理)の風間巡査部長の監視を「チームtomo」の三人にやらせていたのでした。
この一件を聞き込み、右京には事件の概要が見えてきたのでした。
冠城にせよ社にせよ、はたまた高校生の「チームtomo」にせよ、内調は利用したい対象者の弱みを握りこんで「脅し」で操っていたのです。その図式に、右京は気づいたのです。
その上で内調は、自分たちに都合の悪い思想・言動を取り締まって“排除”していくというシステムを今まで以上に構築しようとしているのでした。
また、山脇の死後は新たな標的をもう一人の官房副長官・折口(篠井英介)に定めて、脅しにかかっていました。山脇が死の直前に「気をつけろ」と電話をしてきた理由も“自分と同じ轍は踏ませたくなかった”からでしょう。
重ねて右京は、捜査の進捗を漏らしていたのが冠城だと気づきます。銃撃犯の身体的特徴のひとつに「身長180cmくらい」とあり、それが三人組で当てはまるのは喬樹だと知っていたのは、右京と冠城と角田課長(山西 惇)だけだからです。
その事について冠城は、悪びれずに「バレちゃいました?弱みは内緒です」と言い、「これで、すっきりしましたよ」と言っていました。
内調からの逃亡が、事件の発端だった
今回の関連する事件は、「チームtomo」が警視庁のサーバーをハッキングした事に端を発しています。その行為をネタに三人は安田に“懲役10年、または罰金1000万円”と脅されて、寝食以外は政府要人などの個人情報の収集をさせられていたのでした。
その作業には、風間巡査部長の監視も含まれており、その自殺をいち早く知った3人組は「この場から逃げ出そう」と即座に決めたのでした。手順としては、喬樹が派出所で拳銃(サクラ)を奪い安田を襲撃。その混乱に乗じて、智弘と航大も逃げるという段取りでした。
その作戦は成功したかに見えました。喬樹と智弘、航大が落ち合う場所はJアラートをハッキングした時のH.N「QTES689」をカナ変換した時の「たかいと=高井戸」689番地で、合流も上手くいきました。
ところが、智弘が原因不明の高熱に見舞われて三人は身動きが取れなくなってしまいました。その危機的状況に対して喬樹が取ったのは「自分ひとりが出頭・自首するから、あとの二人は見逃してくれ」という要求でした。
そかし、その願いは粉砕されてしまいます。航大が智弘の薬を買いに行く途中にあった公衆電話から自宅へ(無言)電話をかけてしまったのです。
その行為によって、安田は三人組の隠れ家を特定して三人を捕まえに行きました。喬樹との約束などは最初から守る気はんあいのでした。
隠れ家は内調の襲撃にあい、航大は屋上から飛び込みました。智弘は右京がH.Nの謎を解いたおかげで間一髪で助け出して「花の里」の女将・幸子(鈴木杏樹)に身柄を預けました。喬樹はバイクで逃げ去っています。航大は、病院に搬送されて、一命はとりとめていました。
「僕は君に、正義と公正さを望み…」
仲間の復讐に駆られる喬樹は、ハッキングしたスケジュールで有馬の現れそうな場所を特定しました。その格好の催しが「内閣情報調査室・警察庁合同納会」でした。
当然、セキュリティシステムも厳重ですが喬樹はハッキング技術を駆使してシステムを突破して行きます。右京と冠城は停職中のために手帳を持っていませんでしたが、甲斐の「私のツレだ」の一言で会場入りを果たしました。
会場入りはしたものの、喬樹は拳銃を構える警官隊に囲まれます。「うぉぉぉ~」、ヤケを起こしてトリガーを引こうとした所に冠城が飛び込んで、喬樹に犯罪を重ねさせる事だけは避けました。
右京は静かに喬樹に話しかけます。「確かに、この世には不正が存在します。~(中略)~僕は君に正義と公正さを望み、それを実現しようとする努力する側の人間になってほしいと願っています。君は、そうなれる。僕は信じています」。
有馬は衣笠と、その部下たちに連行されて行きました。
今回のスペシャルは、国家間の問題ではなく“国内の統制”を巡る「正義の在り方」を問うた一作ではなかったかと思います。内容が盛り沢山なために、消化不良を感じたのは筆者だけでしょうか?右京が案内役すぎたのが、贅沢で良かったですけどね。
さて、次回は久しぶりの陣川警部補の登場です。こちらも、別の意味で楽しみです。